椅子から去った王子 プロローグ

ニューシネマパラダイスより

by Yumi (2019)

プロローグ

「ニュー・シネマ・パラダイス」という映画をご存じですか?

舞台はイタリア。パレルモ近くの小さな村。

まだ、テレビもインターネットもない時代の小さな映画館でのお話です。

人々の何よりの楽しみは、この映画館で白黒映画を見ることでした。

そんな村人たちのために毎日映画を上映しているのは年老いた映写技師アルフレード。

村にはトトと呼ばれる元気な少年がいました。

映画好きのトトはこっそり映画館にもぐりこんは、アルフレードにどやされます。

そのうちに二人はすっかり仲良くなりました。

ところが、ある日映画館が火事になり、老人は目が見えなくなりました。

一方、初恋にやぶれた少年は傷心のまま村を去って行く・・・。

とまあ、いろいろあるのですが、ここで延々映画の解説を始めるつもりはありません。

何度かその映画を見た私はいつもとても心にひっかかることがありました。

それは映画の中でアルフレードがトトに語って聞かせる物語についてです。

それはこんなお話です。

「昔、ある所に、とても美しい王女がいた。

たくさんの王子が結婚を申し込んだが、王女はうんと言わなかった。

代わりに、王女はこんなことを言った。

『私の窓の下に椅子を置き、100日間、座り続けることができたら結婚しましょう』

王子たちは競って椅子に座ったが、100日間も我慢できる者は誰もいなかった。

ある日、一人の王子が現れた。

王子は来る日も来る日も椅子に座り続けた。

そして、何と、99日目間、座り通したのだ。

ところが、どうしたことだろう!

99日目になって、突然、王子は立ち上がり、去ってしまったのだ」

え、どうして???

誰でも、そう、聞きたくなりますよね?

トトもアルフレードに、

「どうして⁉」

と、聞きました。

でも、アルフレードは「分からん」とぶっきらぼうに首をふり、それきり、答えませんでした。

そして、この映画の終わりまで、なぜ王子が99日目に椅子からいなくなったのか、何の解説もないのです。

どうにも気になるではありませんか!

私はこの映画を思い出す度に、

「王子はどうしてあと1日が辛抱できなかったんだろう?」

と考えました。

ずっと考え続けているうちに、ずいぶん年を経てからのことですが、ある時、ようやくその理由が分かったような気がしました。

とはいえ、「本当にそれが正解なのだろうか?」「ひょっとして、全然違う理由だったのでは?」と思うこともあります。

そこで、私はこの王子をテーマにお話をこしらえてみました。

物語を書くと、ぼんやり考えていたことがはっきり分かったり、思いがけない真理に気づいたりするものですから。

でも、果たして読者のみなさんはどう思われるでしょうか?

「そうだ、そう通りだ!」と、感心してくださるでしょうか?

それとも・・・?

※これは2019年に絵本・童話の創作Online「新作の嵐」」に掲載されたものに若干の修正をしたものです。

「新作の嵐」へはこちらから→https://shinsakunoarashi.com/%e3%81%84%e3%81%99%e3%81%8b%e3%82%89%e5%8e%bb%e3%81%a3%e3%81%9f%e7%8e%8b%e5%ad%901-7/

絵本「せかいいちのやま」・ポストカードなどはこちらから✨Goods

お気に召したらクリックお願いします💕↓

こちらもお願いします↓

にほんブログ村 にほんブログ村へ
にほんブログ村

こちらも↓

ありがとうございました💕